当時はアニメが原作に追いついてしまったがゆえに,アニメオリジナルのエピソードが挿入され,それがまた原作との矛盾を生み出し,原作以上にツッコミどころ満載の作品となりました。ツッコミを入れながら楽しめるのも,この作品の良いところでもあります。
昔のアニメなので今更ネタバレもなにもないのですが,一応ネタバレO.K.の方のみご覧ください。リアルタイムでTVアニメを見ていました。今再び原作と映像を見直して,感想を述べたいと思います。
あらすじ
五老峰では,老師抹殺のために黄金聖闘士のデスマスクが刺客として派遣されます。
老師はデスマスクに,教皇が悪であることを諭そうとしますが,デスマスクは教皇が悪であると知りながら仕えており,「たとえ悪でも勝てば正義」という信念は変わりませんでした。
老師を救うべくデスマスクに立ち向かう紫龍ですが,青銅聖闘士と黄金聖闘士の実力の差は天と地ほどの差があり,全く歯が立ちません。
紫龍が絶体絶命のピンチのとき,牡羊座ムウの登場によって,デスマスクは退散します。
本編
ヨットハーバーの星矢の部屋に集まる氷河と瞬。紫龍と一輝から連絡がないことを気にしています。
原作の一輝が星矢たちと行動をともにしないことはいつものことなのですが,アニメはスタッフたちによって,一時行動を共にしたことがあります。
原作とのつじつま合わせで,一輝は星矢たちとは急によそよそしくなって,別行動をとるようになりました。
聖域には,俺たち以上のパワーを持った黄金聖闘士が待ち構えているかもしれない。
星矢
待ち構えるも何も,聖域で自分の守護する宮で敵を待ち構えるのが,彼ら黄金聖闘士の仕事ですから…。
五老峰
35話で手に入れた「命の水」は,貴鬼に託されて五老峰の紫龍のもとへと運ばれます。
しかし,命の水を持ってしても,紫龍の目は見えるようにはなりません。
視力が回復したのかどうかを確認するのに,目を閉じたまま
目を閉じたまま,どうやって確認をするのでしょう?
紫龍の目が回復しなかったことに,がっかりする春麗と貴鬼ですが,紫龍はがっかりなんかしていません。何しろ,34話で心の目を開かせることに成功したのですから…。
心の目を開かせてくれたのは,春麗や貴鬼,星矢たち仲間であり,そのことを感謝している紫龍のところへ,しばらく留守にしていた老師が現れます。
原作では座したまま動かなかった老師ですが,アニメの老師は動き回ります。
老師はいつもの大滝の前に戻ると,聖域の異変について話し始めます。
聖域
おまえがこの世で唯一と思っている黄金聖衣は,射手座を含めて十二体ある。
老師
黄金聖衣が十二体あることは,聖闘士なら一般常識のはずなので,何も驚くことはないと思います。
そしてアーレスは,ついにアテナとアテナを守るお前たち,青銅聖闘士抹殺のために,黄金聖闘士の派遣を決意した。ついに最悪の事態になったのだ。(中略)一人,己の小宇宙を燃焼させていた。わしも立つ時が来たのじゃ。
老師
己の小宇宙を燃焼させてって…,すでに究極の小宇宙を身につけていらっしゃる方が何を言う…。
わしも立つ時って,老師が立つときは,アテナの封印が解けてハーデス軍が襲ってきたときなので,まだ早すぎますよ。
デスマスク登場
オリジナルストーリーの回収が住んだところで,原作のストーリーに戻ります。
突然,紫龍が今までに感じたこともない強大な小宇宙を感じたその時,老師の背後の滝壺の水面が盛り上がってきます。
デスマスクお得意の念動力で,一時的に水流をせき止めたのでしょうけど,それにしてもこれだけの水かさを一気に集めてくるなんて,なかなか強力な念動力の持ち主ですね。
デスマスクか。フンッ!わしにまで刺客を差し向けるとは,教皇はよほど焦ってきたとみえる。
老師
デスマスクが老師に向けて拳を繰り出したとき,紫龍がそれを阻止するために割って入ります。
聖衣を身に着けたデスマスクの拳を,聖衣を身に着けていない紫龍が膝でもろに受けています。

本気ではないにしろ黄金聖闘士の拳をまともに受けてしまったら,膝が割れているどころか,粉々に砕け散っているどころか,脚がなくなっていてもおかしくないレベルです。
なのに何ともなっていないのは,どういうことなんでしょう?
一方,竹林に春麗と一緒にまだいた貴鬼は,なにか強大な殺気を感じます。
青銅聖闘士が黄金聖闘士に挑戦してくるなど,聞いたこともない。良いだろう,言ってもわからんなら自分で試してみるまでだ。
デスマスク
星矢たち青銅聖闘士は,いい意味で身の程知らずですからね。
しかも聖衣を纏った黄金聖闘士に,生身の体で移動もうとする紫龍です。あ,紫龍は聖衣を脱いだほうが強いから,問題ないのか。
デスマスクだって光速の動き
紫龍がデスマスクに対し,拳や蹴りを一生懸命当てようとしますが,デスマスクの体をすり抜けるばかりです。
光速の動きで避けるから,紫龍の心の目を追いつかないのでしょうね。
今青銅聖闘士と黄金聖闘士の実力の差を,じっくりと味あわせてやる
デスマスク
そういってデスマスクはかめはめ波のような構えをし,そこから拳が何十発何百発と繰り出されています。原作にはなかったデスマスクの流星拳もどきです。
いいですねぇ,これぞ黄金聖闘士!
原作にはなかったデスマスクの光速の動き。
そんな光速の拳を何十発と生身の体に受けても,ダメージをそれほど受けていないように見えるのはなぜでしょう?
そんな中でも紫龍は僅かなスキを付いてデスマスクに蹴りを食らわせようとしますが,デスマスクに指一本で受け止められてしまい…。
聖闘士とて生身の体…,聖衣に覆われていない指先…,なのに突き指すらしないなんて,どんな体の作りをしているのでしょう。
紫龍の体を指一本で受け止めると,これまた絶妙なバランス感覚で,紫龍を指先で回して飛ばします。そのまま指一本で攻撃されて,滝壺の中へ……。
天秤座の黄金聖闘士
そして本来私が討たなければならない相手は…,あなたでしたねぇ,老師。いや,黄金聖闘士十二人の一人,天秤座の聖闘士!
デスマスク
ここで天秤座の聖衣箱を背景に,目を光らせることもないでしょうに…,老師…。
老師が…,天秤座の黄金聖闘士
貴鬼
師匠のムウ様から聞いていないんかい!!
貴鬼は黄金聖闘士なのに紫龍を助けなかった老師に憤ります。老師が戦いに参加できない理由は,このときは原作でもまだ明らかになっていないときでした。
正義とはなにか
老師は,教皇こそが女神を葬り,聖域を我が物にしようとする反逆者であることを,デスマスクに言います。しかしデスマスクは,教皇が悪と知りながらも敢えて仕えている聖闘士です。
正義と悪の定義など,時の流れによってどうにでも変わってしまうものなのだ。それは,過去の歴史が証明しているでしょう。たとえ悪だろうが,最後に勝ったものが正義になる。見方を変えれば,正義も負ければ悪となりうることもあるのです。わかりますか,老師。
デスマスク
リアルタイムで聖闘士星矢を見ていた,中二病全開の頃は,デスマスクの言っていることなんてあまり理解できませんでした。
しかし今は,ひじょうによく分かります。
歴史は常に勝者が作り上げていますからね。
馬鹿者め!悪が正義になることなどあるものか!かつてどんなに最強を誇る帝国でさえ,いつかは滅び,消え去っていった。それが所詮正義なき力というものだ。悪は所詮,悪に過ぎん!
老師
いや,それ,ただの盛者必衰を言っているだけのようにも聞こえてきますけど…。
負けた側は悪政だと言われ,勝った側は悪政を倒しただけと主張するのが世の常ですよね。
再び紫龍
老師とデスマスクが正義の話をしている間,紫龍はずっと滝壺に落ち続けていました。
さすがは廬山の大瀑布の滝壺です。深いです。
大抵の人は水に落ちるとすぐに浮かび上がってきそうですが,紫龍は聖闘士で筋肉質ともあってか,沈み続けていますね。
老師とデスマスクが話している間,ずっと水の中に落ち続けていても溺れないとは,さすが聖闘士です。氷河も浸水可能時間もすごいですが,紫龍も負けてはいませんね。
デスマスクが老師に拳をふろうとしたその時,龍星座聖衣が紫龍の体を覆います(尺稼ぎのためか,パーツのひとつひとつが紫龍の体にゆっくりと装着されていきます)。
デスマスクが登場する時も,滝壺の水位が上昇しましたが,今度は渦を巻きながら上昇してきます。
もちろん,その渦の中心から水柱を上げて紫龍が登場します。
サーフィンよろしく,水柱の上に紫龍が乗っています。
水柱の上から,紫龍渾身の廬山昇龍覇!不意打ちを受けたのが如くデスマスクは拳を食らって,弾き飛ばされます。
見た目3~5mぐらい後退りしただけで済んでいるのって,黄金聖闘士の耐久力はやはりすごいですね。
蟹座の散開星団プレセペは,中国では積尸気と呼ばれる。積尸気とは,積み重ねた下から立ち上る鬼火の燐気のこと。そう,つまりプレセペは地上の霊魂が天へ昇る穴なのだ。
デスマスク
説明乙。
この時のデスマスクは,宙に浮いています。黄金聖闘士が宙を飛べるのは,デフォルトなのかもしれません。
デスマスクの積尸気の穴に,ジリジリと引き寄せられる紫龍。
デスマスクの周りには,紫龍だけでなく,老師や貴鬼,春麗もいるのに,引き寄せられるのは紫龍だけです。
周囲を巻き込むことなく,技をかける対象をちゃんと絞り込めてるじゃん
ムウ様登場

待ちなさいデスマスク!青銅聖闘士を相手に黄金聖闘士のあなたが本気になるなんて,大人げないじゃないですか。
それに紫龍は私の知人。むざむざと討たせるわけにはゆかない。
ムウ
原作では「知己」となっていましたが,アニメでは子どもたちにもわかりやすいようにするためか「知人」に変わっています。
ム,ムウ様が,黄金聖闘士!?
貴鬼
貴鬼よ!おまえの師匠だろう!
弟子のおまえが,師匠の正体を知らないなんてことはないだろう!
フッ,もちろん,決戦の時がきたということさ。聖域の教皇と,日本におられるアテナのな。さ,どうするデスマスク。戦いも幕をおまえとこの私の一戦で開けるか?
ムウ
ムウの登場に,黄金聖闘士を2人も相手にするほどバカではないと捨て台詞を吐きながら,デスマスクは去っていきます。
宙を歩いて大滝の中に!
聖闘士の仲間
老師が天秤座の黄金聖闘士だっただなんて…!
紫龍
知らなかったのはアニメの紫龍で,原作の紫龍はたぶん知っていたと思います。
老師が今まで動かなかったのは,紫龍を試していたからだとか。
もうこれからは師と弟子ではなく,同じ聖闘士としてアテナを守り,聖域を悪の手から救うのじゃ。紫龍よ,今日からわしも,お前たちの仲間じゃ。
老師
同じ聖闘士としてアテナを守るって言っておきながら,結局はアテナに与えられた試練だとか言って,何も動かなかった人が何をいうか。
アニメスタッフは,老師がこれから動いてくれることを期待していたのかな?
それに,そもそも老師は最初から仲間だったと思います。
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