第33話『巨蟹宮の死闘の巻』の感想

ツッコミ,感想,ネタバレありです。ネタバレO.K.の方のみ御覧ください。古い作品なので,ネタバレも何もないかもしれませんが,一応忠告しておきます。漫画の話とわかっていても,科学的に突っ込みたくなることってありますよね。

目次

本編

星矢と紫龍は4番目の巨蟹宮へとたどり着きます。

巨蟹宮を守護する蟹座のデスマスクといえば,紫龍にとって少なからぬ因縁のある相手。紫龍は星矢を先の獅子宮へを行かせ,巨蟹宮は紫龍が引き受けます。

この先のいずれかの宮で氷河の身が危機に陥ったことは間違いないんだ。一刻も早く救ってやらねばならん。たのむぞ星矢!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P170

陰気臭い宮

何だここは,今までで一番陰気臭い宮だな。入った瞬間まるで墓場にでも迷い込んだような気になるとは。

文庫版『聖闘士星矢(5)』P171

今までで一番って…,まだ4つ目だよ。今までで一番というために必要な母数に達していないような気がするのですけど…。

無数の顔

ちょっと待て星矢…今なにか異様なものを踏んだ俺の足元を見てくれ。

文庫版『聖闘士星矢(5)』P171

星矢よ,目が見えるのだから紫龍より先に気づけよ。

人の顔が壁掛床から浮き出て,巨蟹宮の壁と床一面が死人の顔に覆われています。

硬い石壁よりも,見た目は気持ち悪くても柔らかい死人の顔のほうがクッションになってダメージが軽減されて良いんじゃないの?

と思ってしまったのは私だけでしょうか。

クックククク,驚いたか小僧ども

文庫版『聖闘士星矢(5)』P174

これまたザンという音とともにデスマスクが登場します。

ムウが金牛宮のアルデバランに挨拶に行ったときもザンという音を鳴り響かせていませていました。黄金聖衣で宮を踏みしめると,こんな音がするんですね,きっと。

デスマスク

教皇の悪の素顔を知りつつあえて仕えている黄金聖闘士の風上にも置けないやつだ!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P174

急に現れたように感じますが,きっとどこかに隠れていて,2人の様子を見ながら出てくるタイミングを伺っていたのでしょうね。

まずは死に顔を壁一面に登場させてから…。

この無数の死に顔どもは,すべて今までこの俺が殺した奴らよ。その霊が浮かばれず,成仏できずに永遠にこの俺が預かる巨蟹宮の中を漂っているのだ。

ある者は恨めしく,ある者は悲しげに,またある者は苦痛の表情でな。

いわばこの無数の死に顔どもはこの俺の勝利の証し,強さの勲章でもある。

わかるか小僧,この俺の名がデスマスクと呼ばれる所以でもあるのだ。クククク…。

文庫版『聖闘士星矢(5)』P175

聖闘士の戦いって,一般人を巻き込むような戦いをしていないはずですけどね。

そもそも相手は神とその下の戦闘員ですし,戦闘場所はほとんど人気のない場所。

セインティア翔では,デスマスクは一般人を巻き込んだアカデミーの破壊という行為をやりましたけど,原作ではそれらしい勅命を受けた形跡はありません。

死人の顔の中に,幼い子供の泣き顔を見つけた紫龍と星矢。

子どもは子どもで固まっています。殺された時間が同じだったのか,それとも年齢ごとに集めてあるのか,おそらく前者だと思います。

敵を追い詰める際に巻き添えになったガキが結構いたかもしれんが,これも悪を懲らしめるための些細なことだ。

戦争でもいちいち女子供を避けて爆弾を落としているわけでもあるまい。それと同じだ。

文庫版『聖闘士星矢(5)』P176

必ずしもデスマスクが殺したのではなく,逃げ惑う敵が辺り構わず周囲の女子供を巻き添えにしたとも考えられなくもありません。

間接的にデスマスクが殺したとも言えなくもありませんけど…。

戦争では,一番犠牲になるのは兵士ですが,一般人も巻き添えになるのは同じ。ハマスのように一般人を盾にすることだってあります。それを避けて敵を倒すことは,なかなか難しいのも事実。

そんなものが勝利の証や強さの勲章になどなるか!聖闘士は常に正義の戦いをしなくてはならないはずだ!

デスマスク,やはりお前には黄金聖衣をまとう資格などひとかけらもない。聖闘士の名にかけて,この紫龍,全力をかけてお前を倒す!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P176

大人になって分かること,それは,正義とは普遍のものではなく立場が変われば正義もまた変わるということ。みんな好きで戦争しているわけでもないし,それぞれがそれぞれの正義のために戦っています。

子供の頃は正義だと信じていたことが,実は違っていたということは山程あります。

紫龍の言い分も理解できますが,言っていることは中二病全開ですね。

というわけで,紫龍は星矢を先に行かせてデスマスクと因縁の対決をすることになります。

黄泉の入り口

五老峰ではムウの登場で食らうことのなかった積尸気冥界波ですが,今度は見事に技を受け,紫龍は黄泉平坂へと送り込まれます。

あの世の入り口へと行った紫龍は目が見えるようです。

現世で見ることと,あの世の入り口で見るという行為は全く違うもののようです。

紫龍は黄泉平坂で死者の列に加わる氷河の姿を見出します。あの世へと旅立とうとしている氷河には,紫龍の声は届きません。

技をくらって生きたままあの世へ送られた紫龍と,仮死状態にさせられている氷河の違いでしょう。氷河はほとんど死人扱いに近い状態であるということです。

そこには沙織の魂もいました。

沙織は神なので,黄泉のルールに完全に縛られてはいないのでしょう。紫龍の声が届きますし,声を届けることができています。

あの大勢の人達がいこうとしている場所はまさしく死の国。行ってしまったら二度と戻れません。あなたの肉体はまだ巨蟹宮にある今,魂のみがこうして死の入り口にきているのです。

さあ,もう一度戻りなさい,紫龍。そして今度こそデスマスクを倒すのです!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P183

ということで,神の力で現世に戻ってきてしまった紫龍の魂。そのまま死の国へ行っていたのなら,戦わなくてすんだはずですが,戦わなければならない宿命というものは悲しいですね。

しかしそこでビビってのがデスマスク。あの世へ送った紫龍の魂が戻ってくるなんて,思いもしません。ましてやそこに神が働きかけているなんて知る由もないのです。

おそらく,デスマスクにとってははじめての体験だったのでしょう。

俺には師の入り口より引き戻さねばならない人間がまだ二人もいる。今度は逆にお前をあの世へ送ってやるぞ!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P185

ということで,戻るなりいきなり廬山昇龍覇を放つ紫龍ですが,相手は黄金聖闘士です。しかも廬山昇龍覇をデスマスクに打つのは2度めです。

同じ技が2度も3度も黄金聖闘士を相手に通用するか。昇竜覇はすでに一度五老峰で見切っているわ!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P187

同じ相手に何度も積尸気冥界波を撃っているデスマスクですが,そこは黄金聖闘士と青銅聖闘士の違いがあるということで……。

というわけで,再び積尸気冥界波で,紫龍は黄泉平坂へ…。

春麗の祈り

天の龍座の方角に流れ星が…。

(中略)

ああ神様…どうか紫龍をお守りください

文庫版『聖闘士星矢(5)』P189

ギリシアと中国では時差があるということもあり,中国はすでに夜中。

いくら田舎とはいえ,いや,田舎だからこそ,若い女の子がそんな夜遅くに出歩いてちゃダメ。

その春麗の祈りが,ギリシアにいるデスマスクを惑わせるとは…,春麗恐るべし。春麗も修行すれば,立派な女聖闘士になれる才能がありそうな気がします。

春麗の祈りは,黄泉の国の入り口に落とされた紫龍にも届き,紫龍は6年前を思い出します。

6年前

老師のもとへ,聖闘士の修行になるためにやってきた紫龍の様子を,木陰から見ていた春麗。

赤ん坊の頃,廬山に捨てられていたのを老師に拾われて育てられたという春麗。中国の一人っ子政策の犠牲者かな?

老師の教えは厳しいけど温かさがある。俺はこの五老峰に来てはじめて人間的な温かさを知ったんだよ。老師や春麗,君のお陰だ…ありがとう,春麗。

文庫版『聖闘士星矢(5)』P193

再び黄泉の入り口

紫龍が再び黄泉の国の入り口から戻ってきそうな気がしたデスマスクは,自身も黄泉平坂へ行って紫龍を完全に倒すことにしました。

俺は自ら作り出すゆえに積尸気の穴は自由に出入りできる。だがそんな俺でも一度落ちたら二度と這い上がっては来れんところ,みろ,それがあれだ!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P194

そんなこと,教えなきゃよかったのに。

積尸気冥界波は,相手の魂を異世界とも呼べる黄泉平坂に送るだけの技なので,異世界を自由に行き来できる相手には効かないとも考えられますね。セインティア翔ではムウも行き来していましたし…。

黄泉比良坂

あの黄泉比良坂こそがまさしく死の国への落とし穴!!あそこに落ちたら二度と蘇生することはない!確実に死ぬのだ!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P195

そんなところで戦うなんで,自分もそのリスクを追うということをデスマスクは考えなかったのでしょう。まさか黄金が青銅に負けるとは思わないですからね。

紫龍は2度も積尸気冥界波を食らっているだけに,ダメージをそれなりに受けています。デスマスクに比良坂まで引きずられて行きます。

人を引きずるなんてかなりパワーのいる仕事のはずですが,黄金聖闘士からしてみれば容易いことなんですね。デスマスクは軽々と紫龍を引きずってます。

あの世の入り口に届く春麗の祈り

デスマスクが紫龍を穴に投げ込もうとしたその時に,またもやデスマスクを惑わせる春麗の祈り。

煩わしさのあまり,デスマスクは春麗を念動力で滝壺に落とします。

春麗を滝壺に落とす前に紫龍を穴に落とせば良かったものをしなかったものだから,紫龍を怒らせてしまったではないの。

ギリシアの聖域から中国にいる春麗を滝壺に落とすなんて,デスマスクの念動力もかなり強いと考えたほうが良いでしょう。

いや,それ以上に黄金聖闘士であるデスマスクを煩わせるほどの祈りを届ける一般人春麗の力の方がある意味スゴイ。

それにしても,紫龍はどうして春麗が滝壺に落とされたと知ったのだ?

春麗が滝壺に落とされて,怒りに燃えて熱くなる紫龍の体。デスマスクの手が燃えるほど感じるくらいの体温って,すでに人間じゃありません。

そしてここでデスマスクの迷言その1

あじゃぱアーッ!!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P1200

アジャパーって…。

逆鱗

ということで怒りの小宇宙を燃やしてデスマスクをタコ殴りにする紫龍。黄金聖闘士の面目丸つぶれのデスマスク。

龍神は最も大切なその鱗に触れた者には情け容赦なく大いなる怒りをもって滅ぼすという!龍を怒らせることは逆鱗に触れるということだ!!

おまえはこの紫龍の逆鱗に触れたのだ!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P203,204

普段の冷静な紫龍はどこへやら…,完全に人が変わっています。

命など塵芥と同じように次から次へとこの宇宙へ浮き出てくるものを…女々しいやつよ。

文庫版『聖闘士星矢(5)』P204

命に対する考え方が,シャカに近いような近くないような…。

デスマスクは深いことを言う。

紫龍はデスマスクを攻撃しますが,やはり黄金と青銅ではもともとの実力差が天と地ほどの違いがあります。あっという間に形勢逆転しまい,紫龍は比良坂の穴へと落とされそうになります。

黄金聖衣

聖闘士の能力は纏っている聖衣で決まるわけではないはずなのですが,やはり聖衣自体が持っている鎧としての防御力というものが違います。

紫龍にトドメを刺そうとするデスマスクに,亡者共がまとわりつきます。デスマスクに殺された成仏できない亡者たちがデスマスクの動きを止めようとしますが,デスマスクに比良坂の穴へと次々落とされていきます。

わ…わからない。正義を守るべき聖闘士に…しかもその究極に位置する黄金聖闘士にな…なぜこのような男がいるのだ…神はなぜこのような男に力と黄金聖衣を与えてしまったのだ…なぜだ~!?

文庫版『聖闘士星矢(5)』P210

デスマスクの圧倒的なパワーの前に心が折れそうになる紫龍ですが,それでも悪あがきをします。

落とされそうになりながらもチョップを繰り出すと,フットパーツがデスマスクの体から外れ,紫龍の攻撃が生身のデスマスクに当たります。拳を繰り出せばアームパーツが外れました。

青銅聖闘士とはいえ,その攻撃をまともに受けたら,骨なんて簡単に砕けてしまいます。

蟹座聖衣が自らの意思でデスマスクの体から外れ,オブジェ形態になります。

いくら悪とはいえ,そんな無防備な相手に手を下すなど,この紫龍の誇りが許さない!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P215

脱ぐんか~い!!(お約束)

勝敗は,聖衣は関係なしに小宇宙の勝負となりました。

登れ龍よ!天高く!!廬山昇龍覇ーーー!!

文庫版『聖闘士星矢(5)』P219

聖闘士に同じ技は2度も通用しないはずですが,小宇宙が相手を上回っていれば,関係ないようです。

デスマスクの魂は比良坂の穴へ,紫龍の魂は現世へと戻りました。

現世に戻ると,瞬が心配そうに見ていました。

小宇宙通信

小宇宙が使える聖闘士に便利な技,テレパシーという名の小宇宙通信。小宇宙で小宇宙に直接語りかけます。

紫龍,春麗は無事じゃ,心配することはない。デスマスクめ,攻撃的テレポーテーションなど,このわしの前でやりきれるわけがなかろうに。

(中略)

ところで紫龍よ,おまえ目が見えるようになったようじゃの。

文庫版『聖闘士星矢(5)』P226

デスマスクは春麗が滝壺に落ちて確実に死んだかどうかの確認を怠ってしまったのがいけませんね。魂を冥界に送る技の使い手らしくありません。

老師は紫龍の目が見えるようになったということを,どうやって確認したのでしょうか。ギリシアと中国は,かなり離れています。直接会っているわけではありませんしね。

紫龍も,老師に言われるまで気が付かないとは…。読みの入り口では見えていたから,現世では見えなかったということを忘れていたのでしょう。

老師に励まされて,次の宮へと急ぐ紫龍と瞬です。

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