ツッコミ,感想,ネタバレありです。ネタバレO.K.の方のみ御覧ください。古い作品なので,ネタバレも何もないかもしれませんが,一応忠告しておきます。漫画の話とわかっていても,科学的に突っ込みたくなることってありますよね。
本編
紫龍は暗黒龍星座との戦いが終わり,瞬が崖下から星矢を引き上げてきます。星矢の体はすでに真っ黒に変色しています。星矢の変わり果てて姿に,瞬も紫龍も心配します。
このままではどうせ死ぬ。ならばいっそひと思いに…… by 紫龍
文庫版『聖闘士星矢(3)』P9
紫龍はもう少し言葉を選びなさい。
「ひと思いに」なんて言って,星矢の星命点を思いっきりつくもんだから,瞬がマジでびっくりして慌ててしまったではないですか。一般の読者だって,紫龍が星矢のトドメを刺したと思って,びっくりしちゃいましたよ。
しかし心臓近くの星命点から突いていますから,瞬が驚くのも無理はありません。
星命点
人間は誰でもどこかの星の宿命の下に生きている。
守護星座を持つ聖闘士ならばなおさらのこと。その星座が命運を左右するのだ!
つまり,聖闘士にとって自分の星座の形がそのまま自分の体の急所を現している。それを星命点というのだ。
文庫版『聖闘士星矢(3)』P11
星命点のはなしは,ここと聖域十二宮での氷河とミロの戦いに出てくるだけですね。星座の形がそのまま急所って,敵にバレたら困る聖闘士の機密事項ではないですか。
だから,聖闘士同士の戦いにしか出てこないのかな。
医学の発達していない中世ヨーロッパでは,病気は悪い血が原因だとされて血を抜く治療法がありましたけどね。体が弱っている人間から血を抜いて,さらに体が弱って死亡率が上がってしまったという治療法ですよね。
ともかく,紫龍はペガサスの13の星命点をすべて突いたわけです。
生きるか死ぬかは星矢の小宇宙次第だ。 by 紫龍
文庫版『聖闘士星矢(3)』P13
紫龍の言葉ですが,どこかで聞いたような台詞ですね。紫龍がジャミールを訪れ,聖衣に血を与えて倒れたときに言った,ムウ様の言葉ですね。
一輝の元へ
星矢の回復を待たずに,黄金聖衣をもって一輝のもとへと行く瞬と紫龍です。星矢をほったらかしにするとは,意外と薄情です。紫龍はいつの間にか聖衣を纏っています。
戦っている最中は聖衣を脱ぎ捨て,戦いが終わるとちゃんと聖衣を纏うのですね。
瞬の鎖が反応し,一輝の存在を示します。
瞬,下がっていろ。いかに敵とは言え,兄を相手に戦いはしにくかろう。by 紫龍
文庫版『聖闘士星矢(3)』P16
そもそも体に血が半分しか残っていない紫龍は,戦えるような状態ではないでしょう。血が足りなくてフラフラ状態の紫龍なんて,一輝にとっては指一本で倒せてしまう相手でしょう。
おそらく,紫龍だけではなく作者自身もTVアニメのスタッフも,紫龍は血が足りない状態であるということを忘れてしまっていると思われます。
この後の紫龍は,どう考えても普通に戦ってますし,血が足りない設定はどこ消えた?
土下座瞬
そんな紫龍を腹パンで気絶させる瞬です。
にいさん,僕の命を兄さんにあげます。(中略)もし僕の命ひとつで戦いがおさまるなら……,兄さんが男らしく優しいかつての兄さんに戻ってくれるのなら,喜んでこの生命を差し上げます!by瞬
文庫版『聖闘士星矢(3)』P18
一輝に土下座する瞬です。一輝の言う通り,いくら兄弟でも甘いとしか言いようがありません。6年も離れ離れに暮らしていたのですから,どこまで情が残っていたのかも分かりません。
まぁ,孤児だから一般の兄弟以上に強い絆があるとも考えられますが,そもそも小学校低学年で離れ離れになってしまっているのです。どこまで情が残っているのかなんて,怪しいものです。
瞬が情が強すぎて,一輝の情が一般的なのかもしれません。
その後一輝が瞬の危機のたびに登場するようになるのは,孤児故の兄弟の情を思い出したからなのかもしれません。
死んだと思っていたら
聖闘士星矢世界ではよくあることですが,死んだと思った人間が,実は生きていたなんて言うことがあります。今回は,氷河が何事もなかったかのように戦いの場に復活してきました。
一輝が瞬を本気でぶん殴ろうとしたそのときに,氷河がかっこよく再登場します。
聖衣の胸パーツは破壊され,胸から血が流れた跡があります。流血具合の割にピンピンしています。痛みもすでに消えてしまったかのような登場の仕方です。
そこに星矢も復活してきました。星矢も流血具合の割にピンピンしています。星矢は聖衣を脱ぎ捨てたまま戦いの場に戻ってきています。星矢は自分で聖衣を脱ぎ捨ててはいますが,どこで脱ぎ捨てたのか忘れてしまっているようです。
気絶していた紫龍も復活しました。言うまでもありませんが,紫龍は血が半分しかないはずです。
フッ,そんなに格好をつけず,全員でかかってきたらどうだ。6年前のあのときのようにな。by 一輝
文庫版『聖闘士星矢(3)』P22
6年前のあのときのことを瞬は知らないようです。6年前のあのときのようになって,瞬以外は何か関わりがあったのか,何かを知っているのか。
ひょっとして一輝は,瞬が見ていないところに他の孤児たち全員にタコ殴りにでもあったのでしょうか。
瞬の話しぶりでは,瞬がアンドロメダ島に送られたのは,修行地に向かわされた孤児たちの中では早い方だったようです。一輝は,瞬がアンドロメダ島に送られてから,遅れてデスクイーン島に送られたようです。
瞬がアンドロメダ島に送られてから,タコ殴りにあっていたのかもしれません。
聖闘士に同じ技は二度通用しない
氷河は,幻魔拳を打つのはムダだと言って,瞬をかばいます。
氷河は一輝の幻魔拳から立ち直ったようですね。ずいぶんと早い立ち直りです。幻魔拳を打った相手は精神的にボロボロになるといっても,こんなに早く立ち直られては,あまり効果がない技と言えます。
ほう,ならば幻魔拳をかえすことができるというのか。by 一輝
文庫版『聖闘士星矢(3)』P24
氷河の挑発に乗った一輝は幻魔拳を放ちますが,氷河は待ってましたとばかりに幻魔拳に合わせてダイヤモンドダストの角度を変えて,氷の鏡を作り上げます。
そして幻魔拳は一輝にブーメランとなって返ってきます。
その幻魔拳が一輝の額の古傷に当たって,肉体だけでなく心の古傷が同時にえぐられていきます。
すべてのものを憎むのだ…
幻魔拳を自らに受けた一輝は,デスクイーン島での日々を思い出します。
4年も経ってまだわからんのか,貴様が強くなるために足りないものが!!それは憎しみだ!!(中略)貴様が日本で学んできた古武道の心が,貴様の成長に歯止めを駆けているのだ!(中略)ただ目の前の敵を殺すことだけを考えろ!!
文庫版『聖闘士星矢(3)』P28
一輝は日本にいた頃は孤児院にいたはずです。孤児院で古武道を習わせてくれたのでしょうか。児童養護施設にいる子どもたちでも,選択の範囲は限られているとは言え習い事をすることは可能です。
しかし,古武道は孤児院にいる子が習わせてくれるようなものだとは思えません。グラード財団系列の孤児院に収容された後に習わせてもらった可能性もありますが,それはおそらく短期間だったはずです。
小学校低学年の児童が古武道の心を習得するほどの期間はなかったはずです。
デスクイーン島には活火山があります。目の前で火山が噴火しています。火山が近すぎます。このような近距離で噴火している場合,全島避難になっていてもおかしくない場所です。火山性ガスや火砕流がいつ襲ってきてもおかしくない場所です。
過酷な場所というよりも,近づいてはならない場所です。立ち入り禁止区域です。
ギルティーがかぶっているマスクは,インドネシアの仮面を連想させます。デスクイーン島はインドネシア文化圏の火山島である可能性があります。
エスメラルダ
修行を終えて傷だらけの一輝は,地下室へと放り込まれています。部屋というよりも,牢獄のような地下室です。白骨死体がゴロゴロ転がっています。もっとも,この白骨死体はこの場所に避難してきたものの,火山性ガスによって亡くなった者たちである可能性があります。
一輝がいる地下室に,エスメラルダがやってきます。性別と髪の色以外,瞬と瓜二つという設定です。しかも小麦粉3袋で売られた奴隷という設定です。
そんな奴隷がホイホイと一輝のいる地下室に来れるのも不思議ですが,割と自由時間のある奴隷だったのでしょう。ローマ時代の奴隷に近いのかもしれません。
エスメラルダは本気で一輝のことを心配します。一輝は奴隷身分で自分のところに来るエスメラルダのことを同様に心配します。
不死鳥誕生
一輝の卒業試験です。師匠を倒すことができなければ,聖闘士の資格はとれないということです。不死鳥の聖闘士になるためには師匠を殺さなければならないなんて,女神をひどい試練を与えるものです。他の星座は師匠を殺す必要なんて全く無いのにね(後に氷河も自分の師匠を殺すことになりますが)。
その最後の卒業試験の日に,のこのこやってくるエスメラルダもエスメラルダです。卒業試験の日程を一輝は彼女に伝えてしまっていたのでしょうね。まさか彼女が来るとは思っていなかったのでしょう。
しかし師匠に情がある一輝は師匠を倒すことができません。
師匠の拳は走ってきたエスメラルダの胸に命中し,彼女は絶命してしまいます。
一輝の心は死にました。心が死んで,ようやく不死鳥の小宇宙が目覚めました。
心を殺さなければなれない守護星座って,なんか不憫だ!
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